アートと人を育てること。Clément Bastias クレモン・バスティア

インタビュー企画一回目は、イラストレーターとしてパリで活動しているクレモンに話を聞きました。子供向けの教材やアニメーションのプロジェクトに参加、また、美術学校の講師もしています。

メル氏:クレモンはイラストレーターだよね!どうしてイラストレーターになったの?

クレモン:ものごごろ着いた時からいつも絵を書いていたんだ。落書きみたいに単純な形を描いて楽しむんじゃなくて、僕には当時から描きたいものを把握して何が描かれているのかはっきりと伝えられる力があったんだよ。

お父さんは映画が大好きで、部屋にはポスターがたくさん貼ってあった。(当時の映画のポスターの大半は、写真じゃなくて絵だったんだ。)絵本もたくさん飾ってあった。そういうものが身近にあったから自然に身に付いたんだと思う。

メル氏:子供向けのイラストを描いているのには、何か理由があるの?

クレモン:僕のお父さんは幼児教育の専門家で、お母さんは子ども言語学習の専門家だったんだ。だから僕にとって、「子供と関わること」を仕事にするのは、ごく自然なことだったんだ。

僕はお父さんとお母さんには、本当に良い風に育ててもらった。もちろん世の中には色々な困難や葛藤に直面する子どもたちが居ることも認識しているよ。でも僕の子ども時代に暗い影は全くない。自分自身、子供でいることが大好きだったなぁ!

子ども時代って絶対退屈しないじゃない?ビー玉ひとつ無くしただけで世界の終わりみたいに思うんだ。でも大人になった今は家の鍵を無くしても平然と受け入れちゃう。不思議だね。

メル氏:うん、そういわれてみると本当、不思議!!

クレモン:それに彼らは環境によって無限の変化を見せていく興味深い存在だよ。

メル氏:確か最初は教育学部で勉強していたんだよね?

クレモン: 始めは父親のように教育者になろうと思って、大学で幼児心理学を専門的に勉強し始めたんだ。環境によって無限の変化を見せる、その「環境」の方を分析してみたくて。
子どもは好きだけれど直接教えることは何かシックリこなくて、、、、今はイラストレーションを通じて子供の成長に寄り添うっていう方法を選んだんだ。
でも当時勉強したことは今の仕事にすごく生きているよ。

メル氏:子ども時代を満喫していた君が、どういう経過で大人の思考をするようになったの?思春期を経て徐々に?それとも何か、きっかけがあった?

クレモン:うん、実は僕が18歳の時に母が癌にかかってしまったんだ。その辛くて色々考えた時期を経て、大人としての自分が確立していったんだと思う。

母親がいなくなるかもしれないと思ったその時の動揺はすさまじかったよ。安定して平穏だった僕の家族や生活が根底から揺らいでしまったんだ。人生っていう今まで走っていた電車が脱線していくような感覚だった。

自分でブログを開いてイラストを投稿し始めたのもその頃なんだ。
辛い現実を忘れたくて。僕のブログの中では母が癌だって事実は存在しなかったんだ。随分前の話だからインターネットも今ほどコンテンツに溢れていなかったし、4000人ぐらいの人が僕のブログをフォローしてくれていたんだ。新しいイラストの投稿を待ってくれていた人も居た。
その時初めて、「自分が描いたものを好きと言ってくれる人がいる」っていう体験をしたんだ。うれしかったよ。
その出来事の延長上に、イラストを通してコミュニケーションをしている今の自分が居るんだと思う。
(ちなみにそのブログを通じて初めての恋人もできた!)

メル氏:クレモンのプロとしての活動は、これからどんな方向に向かうの?

クレモン:僕が今望んでいるキャリアは、イラストレーターとしての活動を続けながら、今携わっている美術学校での教育の分野で経験を積んでいくことなんだ。
自分が以前そうだったようにアートをライフワークにしようと思っている若者に関わっていきたい。
それに、自分が今までしてきたこと総合すると、アートの教育の分野に行きつくんだ。そこでは、自分は語る術(言葉)を持っている。 技術も、芸術的感性も、関心を持って他人に教えるということも。
自分の知らないことは語れないからね。自分の居場所だって感じている。

メル氏:クレモンは日本が好きなんだよね!行ったこともあるし。クレモンにとって日本ってどんな場所?

クレモン:西洋人として日本人の中に居て、自分が読めない文字に囲まれていると、完全に自分の日常から自分を切り離すことができるんだ。
ちょうどロスト・イン・トランスレーション(2003年のソフィア・コッポラの映画)みたいに。
2017年憧れていた東京に初めて行ったとき、13時間のフライトの最後で窓から見えた東京の光が見たのが今までの人生で最高の風景。
それに僕は日本語の響きが大好きなんだ。日本語が耳に入ってくるだけで、良い気分になれる。
友達も居るし、また必ず何度も行くよ!

Clément Bastias (クレモン・バスティア)
クレモンの作品はここで見られます。
Instagram
https://www.instagram.com/clementbastias/
tumblr
http://clementbastias.tumblr.com/

インタビュー後記
クレモンは私の学生時代の同級生です。当時フランス語がほぼわからない私に声をかけて色々と助けてくれました。普段は冗談をたくさん言って周りを明るくする愛されるキャラクターです。(「オナラした?」とか日本語の言葉も知っていて、よく笑わせてくれます!)今回インタビューをして、彼のこれまでの歩みと、そして何を感じて活動しているかの一端を知ることができて興味深かったです。表現活動をしながら彼のように客観的に他人に関心を持つことができる人はとても貴重だと思います。  ありがとう、クレモン!Merci Clément san!!