フランスの運転免許のはなし―交通事情からオンライン自動車学校まで。―

フランスの道路事情は?運転免許を取るのは大変なの?現在自動車学校で絶賛免許取得中のメル氏。気付いたことを紹介します。

日本から来て、フランスで運転免許を取得する人は稀だと思います。なぜなら日本の運転免許をフランスの免許に書き変えれば、そのまま使えるからです。
ところが日本→フランス免許の変更ができるのはフランスへ入国してから1年間。  私のように、この期限を逃してしまうと現地の自動車学校に通って、いちから取り直しです。
自分は書き変え期限が過ぎていることを知ってから「取り直し」の現実に向き合うまでに随分とかかりました。今回ようやく重い腰を上げてフランスでの免許取得に挑戦することにしたので、普通運転免許の話や自動車学校のあれこれを書いておこうと思います。

フランスでは日本より簡単に免許が取れる?

日本での運転免許所得は時間とお金がかかり、決して手軽とは言えません。それだけに、フランスでは日本より手軽に運転免許が取れるんじゃないか(フランス人は日本人よりテキトーそうだし)?と淡い期待もしたくなりますが。
そんなこと無い!全く無い! むしろフランスの方が合宿免許など短期集中で免許を取れるシステムも無く長丁場を覚悟しなければならないし、自動車学校へ行くならば、25万~30万円は見ておいたほうがいいので(地方だと20万円弱で取れることもある。) 費用も日本と同じぐらいかかります。
実技試験の合格率は60%程度しかなく(パリやその近郊では交通事情が複雑なせいもあり、これが50%以下に落ちる。)、受からなかったら学校で余分に時限を取ることになり、どんどんと出費がかさんでいきます。

フランスの普通運転免許で運転できる車

3,5トン以下の乗用車、小型トラック、キャンピングカーなど。同乗者8人までOKです。(ちなみに原付(スクーター)に乗るには普通免許の取得から2年以上と経っていることと、講習が必須です。)

フランスではAT車(オートマ車)が多いの?MT車(マニュアル車)が多いの?

ヨーロッパではMT車が主流のイメージが強いのですが、時代の流れか、フランスでは現在30%程度がAT車になっているそう。
日本でMT車に乗っていると「あえて乗っている」「車好き」と見られることもありますが、フランスではMT車が当たり前過ぎて、AT車の方が特別。便利で近代的だと考えられており、 そのイメージはすこぶる良いものです。 (高級ラインの車は全てATです。) 実際は予算や維持費を抑えるためにMT車を選んでいる人が多いようです。
とは言え、走っているのはMT車が多い現状では、免許はMTで取っておこうという人がまだまだ多いです。
ちなみにAT限定免許の方が取得が簡単なので、まずATで取っておいて、その後自動車学校で8時間の講習を受けてMT車に切り替えるという方法も可能です。(教官の話では「MT車の試験の難易度が10だとしたら、AT車は6ぐらい」ということなので、運転が苦手な人はこっちの方が絶対取りやすいはず。ただ、自動車学校の車はATの方が数が少ないので場合によっては配車の予約で苦労するかもしれません。)

日本とフランスの交通事情の違い

代表的なものでは右側通行(車は左ハンドル)。
市街地や住宅街ではスピードの抑えるため、路面の至る所に凸型の盛り上がり(通称“ロバの背中 – dos d’ane”)が作ってあります。

日本では見かけないロータリー型の交差点もたくさんあります。このタイプの交差点では、(特に表示が無い場合は)既にロータリー内を走る車が優先。妨げないように進入しましょう。

規則や標識については、違いはあるものの、結構互換性があると思います。日本で運転が身についていれば、 逆走にだけは気をつけて、あとは乗りながら慣れて行けば 良いのではないでしょうか 。

何だそのルール?日本と違う!?

交差点では自分の右手から来る車が優先。
特に表示が無い交差点では、自分の右手から来る車が優先になります。自分が直進、相手が右折でもです。すごく変な感じです。


https://www.auto-ecole.net/

踏切は徐行でOK!
日本では「踏切=一旦停止!」と覚えているので「一旦停止しなきゃ危ないじゃないか!」と思いますがフランスでは警報が鳴っていなければ徐行でOKです。

フランスの自動車学校って?

フランスの自動車学校は日本の自動車学校とは違って練習場を備えておらず、ただの小さな事務所のような見た目をしています。
練習場が無いということは、、、実技は1限目からいきなり路上なんです。( もちろん仮免なんてものもない)。泳げないのに海に放り込んで「泳げ」と言わんばかりのやり方です。もちろんこの方が実際の道路に慣れるのが早いと思いますが、運転未経験者は走る凶器。実にスリリングです。しかし、どの指導員も「大丈夫大丈夫~。」と余裕の表情。いくら仕事とは言え尊敬してしまいます。(もちろん指導員の席にも運転席と同じペダルが備えてあります。)

ちなみにフランスでは自動車学校の指導員は、いわゆる“先生”という位置づけではないので、敬語などを使わず、お互い友達のようにくだけた態度で接するのが普通だそうです。日本では教習所の教官は先生だと思って接していたのでその差にちょっとびっくりしました。

安くて便利なオンライン自動車学校

近年、フランスで急速に普及しているのがオンラインの自動車学校。すべての手続き、学科の勉強、実技練習の予約がインターネット上でできます。かかる費用も従来の自動車学校の半分から3分の2。
何より普通の自動車学校では車の数が足りずに希望の日時に実技の予約を取るのに苦労すると聞きますが、オンラインの学校は指導員と生徒をマッチングするプラットフォームのようになっていいて、日時、場所を入力して検索すると空いている指導員が表示され、希望のコマを簡単に予約できます。急いで必要時限をこなす必要がある場合など、時間や自分の行ける場所の範囲を調整して検索をかけ直せば大体必要な時に必要な時限を取ることができるので、免許取得までのスケジュールを 主体的に組んでいけます。実に便利で画期的なシステムです。
数年前にスタートアップ企業が始めたこのビジネスモデルが注目され、メディアなどに取り上げられた結果、現在オンライン自動車学校と、そこで免許取得を目指す人の数は急速に伸びています。

オンライン自動車学校の落とし穴

2019年末現在、オンライン自動車学校には特大の落とし穴(私も落ちた。いや、落ちている。)があります。
オンラインの学校からの受験者が増えて試験場のキャパシティを超えてしまい、実技試験の予約が全然取れないことです。
フランスの免許取得の実技試験は各行政地区にある試験センターで行われます。従来の自動車学校は自校で試験場の受験枠を持っているので、その枠に自校の生徒を送り込めます。ところがオンライン自動車学校経由の受験者は個人受験者の扱いになるため、申し込みから試験時間に空きが出るまで物凄く長い間待つことになるのです。(現在パリではモナリザも震える9か月待ち。季節が巡ってしまいます。)
明るい兆しはあります。マクロン大統領になってから、個人受験者も申し込みから最大2か月で試験が受けられるように法律が改正されました。しかし現在はこの法律を適用させるまでの準備と整備の期間に当たり状況は混迷を極めています。
なので、現在なるべく早く免許を取りたい(半年~1年も待ってられない)という人は、多少お金がかかっても、自動車学校に行った方がいいと思います。
近い将来、制度がきちんと整備された時には、安くてフレキシブルなオンラインの自動車学校はもっと使いやすくなるはずです。

ちょっと便利な若者のための制度

フランスは国土が広いので大都市以外の生活では車が必須です。未成年の運転も需要が高く、自動車学校で20時間の運転講習を受ければ、15歳から運転経験者(例えば両親など)同伴で公道を運転することができます。正式に試験を受けて1人で運転できるようになるのは18歳からですが、条件付きであればその前に運転できる手段があるというのはとても便利だな、と思います。

車と環境問題

車の排気ガスは環境に悪影響を与えるので、車の所有はあまりすすめられていません。環境に悪い影響を与える古い型の車はパリ市内に乗り入れが禁止などの措置がとられています。
運転免許試験の学科問題にも「短距離の移動は車はなるべく乗らない方がいい」「カーシェア」「乗り合いのすすめ」などといった問題が多く出題されます。ハイブリッド車、電気自動車の割合も増えていくでしょう。それに伴って、これからフランスの車交通事情も急激に変化していくと思われます。( ハイブリッド車と電気自動車にはAT車しかありませんから、フランスで誰もMT車に乗らなくなり、MT免許を取得する必要が無くなる未来も近いのかもしれませんね。)

まとめ

安全第一で環境に配慮。乗り方を工夫すれば、色々な場所に行き、色々な経験ができる車での移動。慣れない最初は運転は怖いかもしれませんが、思い切って乗ってみるとよいことがあるかもしれません。