文化を”消費”する彼女は、今日も歩き続ける。Vesna Veljkovic ヴェスナ・ヴェルジュコヴィック 

パリの出版社に勤めているヴェスナ。常に文字や情報に触れ、休日はいくつもの展覧会や映画を鑑賞します。一般的にフランス人は、非生産的な時間(ビーチで日焼けしたり、公園で昼寝したり)を楽しむものですが、彼女はそんな中にあって、ちょっと例外的です。なぜ、それほど貪欲に文化芸術に親しむのか、話を聞いてみました。

メル氏:ヴェスナは出版社で働いているよね。どういった経緯で今の仕事に就いたの?

ヴェスナ : 元々、本や新聞とか、メディアに興味があって、その分野で働きたいと思っていたの。大学でコミュニケーション・マーケティングの勉強をして、最初は地元トゥールーズで出版社に就職したわ。
その後、全国区のメディアで仕事をしたいと思ってパリに出てきて、今の会社でもう10年ぐらい出版の仕事をしているの。本の企画、出版の計画、出版社賞の選定とか、3,4種類の常務を平行してしているの。
最近はデジタル書籍に関わる仕事も多いから、忙しいわ。

メル氏:仕事のやりがいは?

ヴェスナ:流行やテクノロジーに興味を持って、勉強を怠ってはいけないし、常にイノベーションの精神を持てることかしら。

メル氏:今、出版業界って厳しいって聞くけれど実際どう?

ヴェスナ:確かに出版は急激にデジタルに移行していく時期だから、生き残りの為の工夫が必要ね。
今は人々がFacebookやyoutubeなどに多くの時間を費やすから、広告もそちらに流れて行っているし。
例えば、ひとつのプロジェクトをブランディングして、印刷やデジタルなど多角的に展開することが大切になってくると思うわ。

メル氏:ヴェスナはアート(展覧会、映画、舞台を鑑賞すること)が好きだよね。

ヴェスナ:そうなの。仕事柄、文字ばかり追って考えているから、芸術作品を観ると頭をリフレッシュできるし、結果的に仕事の為にもなることが多いの。美術館主催の勉強会に参加したりもするのよ。

メル氏:週末は展覧会や映画を3つ、4つ梯子して、常にエネルギッシュに動いているけれど、たまには何もせずボーっとしないの?

ヴェスナ:ボーっと、、、、できないわ。たまには疲れて半日ぐらい休憩することもあるけれど、、、。好奇心が旺盛だから、常に何か読んだり見たり発見していたいのよ。地方都市から出て来たから、パリは文化に親しむのに特別恵まれた都市だと実感しているし、素晴らしい展覧会を見る機会を逃したくないわ。あとはなるべく毎日色々な種類の体験、発見をして、同じ一日を繰り返したくないの。

メル氏:そんなに色々鑑賞するのって、“今”のため?それとも“将来”のため?

ヴェスナ:どちらかっていると“今”。芸術作品を、”消費”(コンソメーション)するの。

メル氏:消費って聞くと、その時“だけ”印象が強いけれと、Vesnaの場合はネガティブに聞こえないな。

ヴェスナ:そうね。もし映画を見に行って気に入らなかったとしても、少なくとも“「自分の目で見た」という事実”はポジティブに捉えているわ。
そういう意味での”消費”かな。
喜びを求めて今を追って、自分の時間を生きて、日常の様々なことの間でバランスをとるのよね。

本を読むのも、展覧会に行くのも、旅行に行くのも、食べものに気を遣うのも。全部、良いものを通して、自分を豊かにするためよ。

メル氏:そうそう、ヴェスナと言えば沢山旅行しているよね。

ヴェスナ:旅行に目覚めたのは案外遅くて、15年ぐらい前かしら。旅行には発見や自由詰まっていて、日常生活と切り離すことができるのことが何よりの魅力。ヨーロッパもたくさん見るものがあるし、遠いところだと、アジアによく行くの。アジアの文化が肌に合うみたい。行った国の数は15~20か国だけれど、その国で見られるもの(美術館、史跡)はすべて見るから、内容が濃いのよ。

メル氏:一番印象に残っている旅行先はどこ?

ヴェスナ:日本。

メル氏:・・・それって、私が日本人だから言ってるんじゃなくて?

ヴェスナ:ちがうちがう。あなたが中国人でも日本って答えるわ(笑)。
もちろんすべての国で、印象に残る場所っていうのはあるんだけれど。中国だったら万里の長城とか。
日本は良い意味で均質化されていて、どこの地方に行っても見るものがあるし、人々の生活に触れられるのがいいわ。日本の歴史文化は、伝統的な中にも繊細さがあって自分の感覚とても合うの。
食べものが気に入ったのはタイ、マレーシア、インドネシア。

メル氏:一番疲れた旅行先は?

ヴェスナ:最近のスリランカ旅行は、沢山歩いて大変だったかな。ミャンマーも、移動で15~17時間、電車とかバスに乗りっぱなしだったから体力的にきつかったわ!

旅先では色々あるけど、どの国でも得るもの方が大きいわ。

メル氏:ヴェスナは日本の文化、人々にも詳しいから聞いてみたいんだけど、日本人のいいところ、そしてあまり良くないところは?

ヴェスナ:日本人のいいところは、相手をリスペクトしてコミュニケーションするところ。旅行中に私が困った場面があれば皆助けようとしてくれし、街も安全だわ。

良くないところ、、、難しいわね。

環境への意識かしら。
何でもプラスチックの容器に入ったものが売られていて、他の分野の発展具合に比べるとエコロジーへの意識が十分高まっていないように感じるわ。人と言うよりは習慣の問題だと思うけれど。
日本では、エコロジーの製品とか、有機の食品も欧米の大都市と比べて手に入りにくいと思う。

メル氏:なるほど。そう言われてみればそうだな。ヴェスナみたいに日本に興味を持っている人に指摘されると、とても説得力がある。

今日はありがとう!

ヴェスナが好きな写真家は森山大道と荒木経惟。ストリートフォトグラフィーが好きで彼女自身も街を歩いたり、旅行する時には積極的に写真を撮っています。街角の破れたポスターのシリーズは数年前からずっと続けています。ヴェスナのインスタグラムを是非覗いてみてください。

https://www.instagram.com/vesna72/

インタビュー後記
ヴェスナはいつも忙しそうで、止まっているところを見たことがありません。どうして展覧会や映画をそれほど貪欲に鑑賞するのか興味があり、インタビューをお願いしました。
「今をよく生きるために、文化を消費する」という考え方は興味深いものです。芸術は数に触れて感覚が養われるし、とにかく観て「それでよし」。と考えて、構えずどんどん芸術に親しむ人が増えるといいな、と思います。
私も、プラスチックを消費する代わりに、文化を消費したいものです。
Merci Beaucoup, Vesna!!